ずっと自分の話ばかりする人にはなりたくない

時折、上司や先輩と飲みに行くことがあるのだけれど、先週の金曜日も世の長時間労働特化型納税奴隷たちが華の金曜日と呼ぶその所以、つまり奴隷労働からのしばしの開放感による高揚感に乗じて飲みに行ったわけであるが、その際はいつものメンバーに加え、齢若干65歳の嘱託職員も一緒に杯を交わすことになった。

当該嘱託職員は誰もが知っている有名大企業の中枢出身で、今は現役を引退し、自由な時間とお金があっても、それらを有効に活用し己の充実感を引き出す能力、即ち教養がない故に、資産も教養もない低劣な私が納税奴隷に従事している会社で嘱託職員として働いているのだけれど、きゃつは教養がないばかりか、人の話を聞く能力さえもない

きゃつは、これは自身が語っていたことであるが、会社員の後半部分を楽して働いていたらしく、今現在、嘱託職員として一定量の労働を課せられている状態に音を上げており、そのストレスのはけ口を求めて今般の我々の宴席にゲリラ的に参加したわけなのだけれど、それはそれでオーケーで、なんとなれば、奴隷労働と気晴らしの無限ループに嵌まりこんでいる私や私の上司や先輩も己が日々思うところを吐き出し、他愛のない話をし、今週もまぁ色々あったけど、何だかんだ気持ちよく終われてよかったよかった、と自己暗示を必死にかけたい気持ちは、当該齢若干65歳の嘱託職員と全くもって同じだからであーる。

一軒目において、我々はきゃつに敬意を払うべく、きゃつの話を優先し、きゃつの話を存分に聞きまくり、もういいだろう、というところまで話を引き出した。きゃつの話は主に己の歩んできた人生、実践してきた仕事論・組織論、今現在の生活や家族の話で、凡庸の範疇に悉く収まるきゃつの話は破格のスケールで退屈である上に、話が止まることがなく、我々はきゃつの話し相手と「それ以外」という2つの役割を阿吽の呼吸でローテーションし、「それ以外」の役割に回った者同士が好きに雑談を交わすというシステムをもってして一軒目を何とか楽しく乗り切った。

一軒目で話せなかった分、二軒目ではお前ら同士で気ままに話せ、あの人はおれが連れて帰る、と上司が粋に取り計らってくれたが、きゃつは、一杯だけ付き合う、と豪語し、頑として一向に帰ろうとせず、結果、自宅が遠方の上司は去り、齢若干65歳のきゃつと20代・30代の納税奴隷たちで二軒目に行くことになった。

二軒目において、きゃつは我々に向かってきゃつが現役時代に付き合いのあった大手企業の話を逐一し始めた。それらの話を通じて、きゃつは自分が大物みたいな感じのニュアンス的な雰囲気の塩梅っぽい程度風のことを語りたかったのだろうけれど、我々凡夫が求めているのはお互いの不平不満を吐露し、傷を舐めあったり、会社のスキャンダルであったり、といった低劣な飲み会であって、どこの企業がでかいだの小さいだの、あの企業の技術がすごいだのすごくないだのという日経新聞的な話は場違いも甚だしく、一応傾聴しているふりをしていた我々一同、実にうんざりしていた。

無論、きゃつは一杯だけにとどまらず、その後も飲み続け、話し続け、二軒目を出るまできっちりと居座った。その間、我々はほとんど何も話す機会さえなく、ひたすらきゃつの話を聞き続けた。実に退屈であった。世間を舐め腐り、無職者として日々を送り、社会的なつながりからほぼほぼ断絶されていた過去のある世間知らずの私は、まじでびっくらこいた。こんなやつが本当にいるのかと。

他人を変えるよりも自分を変えた方が手っ取り早いため、今後の対策は、きゃつとの宴席を極力避けるしかないと思うが、それはそれでいいとして、私の懸念事項は上記のようにきゃつによって散々な目にあっておきながら、その私自身も今現在他人にとってきゃつのような存在になっていないだろうか、あるいは諸行無常の理によっていずれはきゃつのような残念凡夫に成り果ててしまうのではないかというもので、自分で自分の時間を退屈なものに変えてしまうのはその被害者が自分であるが故にどうでもいいとして、他人の時間を見事なまでに退屈なものに変えてしまうというということ、これは由々しきことであり、有害極まりないことで、それは常時他人を楽しませなければならないということではなく、人を縛り、その人の時間を腐らせるようであれば何もせず、自由に泳がせてあげればいいのだけれど、んじゃあ、どうすれば人が退屈しているかどうかを敏感に察知し、余計なことはせず、一軒目でおいどんは失礼するどす、二軒目は若い凡夫同士で楽しんでくるっつたい、と似非京都弁や似非熊本弁を交えながら言えるような極力有害ではない潔い凡夫になれるのかしらん、と考えてみたのだけれど、これは僕のがらんどうの脳髄ではどうしようもない問題であることは明々白々で、まいったなー、と思いながら古本屋に行くと、ヒントになりそうな本を見つけたのでとりあえず当該書籍を読んでみようと思う。

本を読むきっかけを与えてくれたきゃつに心より感謝です。

P.S.

冬なのにあまり寒くないですね。

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