係員の物思い

愚昧な係員が20代でやっておいて良かったこと1選

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今日は成人の日かー。

彼らはこれから20代が始まるのだけれど、幸か不幸か僕はもう20代ではない。

僕の20代を振り返ると、あの10年で色々と経験したなー、と思う。

その色々な経験の中でこれは早めにやっておいて良かったなーと思うことは遍路旅なんですね、これが。

遍路というのは四国の寺88ヵ所を巡る歩き旅のことなのだけれど、あれは本当にやっておいて良かったと思っている。

今よりも遥かに無知無学極まりないかつての僕は遍路の存在すらも知らず、雑誌『BRUTAS』を暇潰しにぼさっと見ていたらそこに遍路に関する小さな記事を発見し、およそ1200キロにも渡る道が四国に整備されていることに驚愕し、その勢いで好奇心が刺激され、遍路道を歩いてみたいと強く思った。

社会を舐め腐り、大学を卒業しても就職する気などろくすっぽなかった僕は、大学を卒業してから実家に戻ると、ささっと準備を整えて遍路旅に出かけた。

フェリーで徳島港に着くと、そこから一番目の寺を目指して歩き始めた。

移動はもちろん徒歩で、寝床はテントと寝袋。

食事は基本的に食パン+マヨネーズと袋ラーメン(キャンプ用のコンロで調理する)と黒砂糖かりんとう。そして道中で心優しい方々に時折頂く野菜やお菓子。

入浴は濡れタオルで済まし、洗濯は宿泊先の公園でこまめに行った。

88番目の寺に辿りつくと再び徳島港まで歩き、フェリーで和歌山港へと向かい、和歌山港から高野山の奥の院まで歩いた。

このように文字通りの極貧浮浪者生活を営みながら2ヶ月ほどかけて僕は遍路道を歩ききったわけなのだけれど、あの2ヶ月間は至極濃密だった。

貧乏歩き野宿旅では自分に必要なもの、すなわち衣食住に関わるもの一式が一つのバックパックの中に収められることになる。

ここで自分に何がどれくらい必要か、ということを見誤れば、荷物は余計に膨れ、その分疲労がたまりやすくなり、荷物が重過ぎたり大き過ぎたりすると、そもそも歩くことさえ困難だ。

僕も持ち物はかなり厳選して臨んだつもりだったのだけれど、それでもバックパックの総重量は14キロで、そのせいもあってか歩き始めた当初は足の裏にまめができまくり、それらが潰れ、べらべらになり、一歩一歩が針地獄を思わせるほどの激痛だったのだけれど、足の裏がべらべら状態で毎朝大きなバックパックと対峙するのはなかなかの恐怖だった。

やっとのことでバックパックを背負い、歩き始め、激痛を感じる度に、自分は何をやっているのかしらん、という虚しささえ覚えた。それほどに荷物があるということ自体が有害に思えちゃったんですねー。

しかしながらこの世の真理、諸行無常のおかげで同じ状態というのは永続することがなく、歩き旅を続けるにつれて、愚鈍な僕もさすがに少しは賢くなり、要らないと思うものはどんどんと手離していき、さらにこれも諸行無常のおかげで体というものが出来上がってきて、まめも完治し、さらにはもう生じることさえなくなり、足腰も強化され、ずんずんずんずんと歩けるようになってきた。もう楽勝である。

日の出と共に起床し、ひたすら歩き、日の入りと共に床に就く。

ただただこれだけの単純な日々なのだけれど、充実感を覚える。これはどういうことなのか。持ち物はバックパックの中にあるものだけだ。移動手段は徒歩だが、徒歩のみで本当にこれほど長い距離を移動できるものなのだなー。まいっちゃったなー。ってことは今実家にある自分の荷物はほとんど要らないではないか、車もバイクも別に要らないではないか。

と今思い返すと極端な考えだとは思うのだけれど、そのような考えに真剣に至るほどに遍路旅は刺激的であった。

遍路旅を終えてからというもの、僕は自分の持ち物を見直し、その多くを処分することになり、物欲が激減し、不要にモノを買うことが少なくなった。

遍路旅を通じて20代前半でこの「そもそも物欲が現出しにくい」という内面的資産、「高価なモノや多くのモノがなくても不足感を覚えにくい」という内面的資産を多少なりとも得ることができたのは大きいと思う。

僕の場合は、そもそもが煩悩まみれの愚鈍な凡夫であるため、遍路旅による肉体的苦痛や不快感をもってしなければ過度な物欲を滅却できずにいたことであろう。

遍路をしていなければ、今もなお過度な物欲に支配され、奴隷労働と浪費の無限ループの深みに嵌まりこみ、エポスカードの奴隷となり、高ストレス労働と気晴らしとローンの返済に勤しむラットレーサーに成り果てていたかもしれない。

物欲を減少させ、不要なモノを買わない・持たないことによるメリットについては自称ミニマリストの方々が語り尽くしているためここでは割愛するが、では煩悩まみれの凡夫は具体的にどうすれば物欲を減少させることができるのかというと、その方法は僕が経験上知っている限り「野宿歩き旅=遍路」しかない。

20代の皆さん、遍路旅はきつくてだるくてGDPとはほぼ無縁ですけど、いいものです。時間がある人は無理のない範囲で是非やってみて下さい。

P.S.

スペインの巡礼路も歩いてみたい。

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